健斗のマビノギブログ

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ブラックから始まるエリン生活 第3話 異世界生活での覚悟


ロナに案内された道の先に重そうな兜をかぶった少年がいた。
兜の中の顔は良く見えない。
「ふ~ん、君が田中健斗?待ってたよ。

僕はティン。今からエリンでの戦い方について教えてあげる。」
癖のように左手で頬杖を突きながら沈んだ声で話すがその度に兜が少しずつずれていくようだ。
戦い方を教えてくれる教官らしい。
そこで健斗は思った。
(教えてもらえるからって今までの人生で武器を持って戦うなんてことは無かった自分に戦闘なんてできるのか?)

「本格的な授業に入る前に肩慣らしとして、あいつらを倒してみない?そうそう、タヌキの事だよ。
そうだな・・・5匹ぐらいがちょうどいいと思う。」
「え?タヌキを攻撃するの?」
「そうそう。あ、その前に木の棒を忘れずに装備すること。さあさあ、行ってこーい!」
そう言われてタヌキたちと向き合った。
中にはまだ幼いタヌキもいる。

(こんなかわいらしい動物を攻撃するのか・・・)
動物虐待という言葉が健斗の脳裏をよぎった。
異世界と聞いて無意識にどこかゲーム感覚でいたが、生き物を実際に攻撃する事になりようやく異世界も現実世界だと実感してしまった。
(そうだよな。これは現実。地球での常識は通用しない。日本では基本、動物を攻撃する必要がないし、攻撃したら問題視されるがここは剣や魔法の異世界だ。
きっと動物も頻繁に人間を襲ってくるし、きっとこんな事はこれからいくらでも起きる。)
健斗はティンの意図を理解し覚悟を決め始めるしかなかった。
(いままで自分はひどい目にばかりあい、周りの人に恵まれていないと思ってたけど日本に生まれた時点で十分恵まれていたんだ。
ここではのどかに暮らすだけでも自然の驚異に覚悟をもたないと生きる資格すらないんだ!)

覚悟を決めて木の棒を装備し、近くのタヌキに襲い掛かる。
鈍い音がし、それでも倒れず反撃され足に引っかき傷を負わせられる。
(くっ!やはり今までの自分の常識は通用しない。タヌキなんて攻撃されたら逃げそうなものなのに逆に襲い掛かってきた。でも、これからここで生きていくためにもタヌキぐらい倒せないと!)
傷を負わされながらも攻撃を続けてようやく倒した。
(生き物を倒す感触はこんなにも気持ち悪いのか。これを後4匹も・・・)
タヌキを攻撃した時の手の感触、動かなくなっていくのを見た時の感覚はとても気持ち悪かった
それでもどうにか健斗は残り4匹を倒して重い気分で再びティンに声をかけた。
「5匹倒してきたよ。」
「思ったより早かったね、すごいよ。」
このティンは自分が甘いのを察していたのか、もっと時間がかかると思っていたらしい。
実際、もっと遅れていてもおかしくないくらい気分が悪かった。
「今の戦闘で気づいたかどうかわからないけど、お互いにスキルを使わずに叩くと攻撃の優先権が変わるんだ。そんな戦闘は長引くしケガもしやすいよ。
相手が通常攻撃する時、防御スキルを使うことでダメージを抑え相手にスキができこちらが攻撃の優先権を握れるよ。」

その後、色々なスキルをティンに教えてもらい、タヌキやネズミや狼、さらにはヘビを相手にスキルの練習をした。

「これで、ここで教えられることは全部かな。基本的な事はここで覚えたからこの世界でも不便はないと思う。」
「ありがとう。おかげでこの世界で生きていく覚悟と力が持てたよ。」
「まあ、またそのうち会えるだろうから、お別れのあいさつは省略するよ。
さあ、これを受け取って。ナオから預かった紹介状だよ。これを持ってティルコネイルに行くんだ。」
そう言ってティルコネイルという村への道を案内された。
「気を付けていってね。また今度会った時よろしく。お疲れ様!」
「ありがとうございました!」
生きるための覚悟と力を教えられ、健斗はいつの間にかティンという少年を師匠のように思えるようになった。